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不妊症の治療

不妊症の治療

保険診療のポイント

治療を行うためには理由(治療適応)が必要

ここがポイント!
  • 保険で治療を行うためには、治療適応(病名)が必要

保険診療で治療を行うためには、「なぜその治療が必要か」という医学的な理由(治療適応)が必要です。検査結果や症状から、その治療が妥当と判断された場合にのみ、保険が適用されます。

治療適応の有無を判定するために、検査・診断を行う

ここがポイント!
  • 検査は治療適応の有無を判断するために行われる

治療適応を判断するため、まず各種検査を行い、原因や状態を正確に把握します。適応がない治療を行うと自費診療になります。また、十分な効果が得られない可能性があります。

診断に対応する治療を行う

ここがポイント!
  • 診断(治療適応)に対応した保険治療を行うことで、治療効果が期待できる
  • 適応外の治療を行うと自費診療になる

検査・診断の結果、治療の必要性が医学的に認められた場合には、保険診療として治療を行うことができます。一方で、ご希望があっても、医学的な理由(治療適応)がない治療は、保険診療として実施できないことがあります。

排卵障害への対応

ここがポイント!
  • 基本は、排卵誘発を行い卵胞の発育をサポートすること

排卵障害への対応は、排卵誘発を行うことです。排卵誘発を行う場合には、明確なメリットとデメリットがありますので、そこに注目していきましょう。

排卵誘発

ここがポイント!
  • 薬剤を使用して、体内のFSHを増加させ、卵胞発育を促す
  • 排卵が起こりにくい、排卵時期がズレやすい方が対象

排卵誘発とは、排卵誘発剤と呼ばれる薬剤を使って、脳から分泌される卵胞刺激ホルモン(FSH)を増加させることで、卵胞の発育を促す治療です。誘発の結果、卵胞が一定のサイズに達すると排卵が起こります。月経不順があり、排卵が起こりにくい方や排卵のタイミングにバラつきがある方が対象となります。

排卵誘発を行う際の注意点

ここがポイント!
  • 2個以上の卵子が排卵することで、多胎妊娠の可能性が上昇する
  • 4個以上の排卵が起こりそうなら、避妊が必要になる

排卵誘発は、排卵のタイミングを早める治療ですが、FSHが増えることで卵胞の発育が早まるだけでなく、複数の卵胞が同時に育つことがあります。その結果、双子や三つ子などの多胎妊娠の可能性が高くなります。特に、4個以上の卵胞が発育した場合には、多胎妊娠のリスクが高いため、タイミングをとることは推奨されません。

卵胞モニタリング、タイミング法

ここがポイント!
  • 経腟エコーで卵胞の大きさを確認する
  • 卵胞の大きさから排卵する時期を推定できる

排卵誘発剤によって発育した卵胞は、一定の大きさになると排卵します。経腟超音波検査で卵胞の大きさを定期的に確認することで、排卵の時期を予測することができます。また、卵胞の育ちが十分でない場合には、追加の注射などを行うかどうかの判断も可能です。予測した排卵日に合わせて性交渉を行うのが、タイミング法になります。

難治例への対応

ここがポイント!
  • 複数発育させていいなら、卵胞発育させることはそこまで難しくないことが多い
  • 複数発育すると、多胎妊娠の可能性が高くなり、妊娠出産のリスクが高くなる可能性がある
  • 体外受精・胚移植であれば、複数排卵による多胎妊娠のリスクを低減できる

排卵誘発剤への反応が弱い場合には、薬の量を増やすことで、多くの場合は排卵を起こすことが可能です。ただし、その結果として複数の卵胞が同時に育つことも多く、排卵の数を完全にコントロールすることは難しい場合があります。このような状況が続く場合には、治療方法を切り替え、体外受精・胚移植を選択することがあります。体外受精では移植する胚の数を調整できるため、複数排卵による多胎妊娠の問題は起こりにくくなります。

卵管性不妊への対応

ここがポイント!
  • 卵管性不妊への対応は、卵管鏡下卵管形成術または体外受精・胚移植で行う

卵管性不妊への対応のポイントは、卵管の状態を改善して妊娠を目指すか、卵管の状態の改善はせずに妊娠を目指すかということです。前者は卵管鏡下卵管形成術、後者は体外受精・胚移植です。

卵管鏡下卵管形成術

ここがポイント!
  • カテーテルを用いて狭くなっている卵管を広げるか、つまっている卵管を再開通させる方法
  • 体外受精・胚移植を回避できる可能性がある

卵管鏡下卵管形成術とは、細いバルーンカテーテルを卵管の中に入れ、狭くなったりつまったりしている部分を広げて、卵管の通りを改善する治療です。バルーンカテーテルの内部には細径のカメラを通すことができ、状態を確認しながら行います。卵管性不妊に対して、体外受精・胚移植以外の方法で妊娠を目指す方法の一つです。

体外受精・胚移植

ここがポイント!
  • 卵管で起こる受精、受精卵の輸送、受精卵の発育を体外で行い、できた受精卵を子宮の中へ戻す方法
  • 卵管留水症(卵管水腫)がある場合には、手術が必要になる可能性がある

体外受精・胚移植は、卵管が狭くなっていたりつまっていたりして、受精が起こりにくい方を対象に行う治療です。体外で精子と卵子を受精させ、育った受精卵を直接子宮内へ戻すことで、卵管で起こる問題を避けて着床させることができます。ただし、体外受精・胚移植の場合でも、卵管留水症(卵管水腫)がある場合には、卵管を切除しなければ着床率の低下や流産率を上昇させる可能性があります。

男性不妊への対応

ここがポイント!
  • 精液所見の改善を行うかどうか
  • 人工授精や体外受精・胚移植で対応を行う

男性不妊への対応のポイントは、精液所見の改善を行って妊娠を目指すか、精液所見の改善を行わず妊娠を目指すかということです。前者は投薬や男性不妊外来の受診、後者は人工授精や体外受精・胚移植です。精液所見の改善と人工授精、体外受精・胚移植は平行して進めることもできます。

人工授精

ここがポイント!
  • 濃縮した精子を、排卵の時期にあわせて子宮の中へ注入して、受精効率を高める方法
  • 重度の男性不妊では効果が得られない可能性がある

人工授精とは、精液を洗浄・濃縮し、子宮内に入る量に調整したうえで、細いチューブを使って子宮内に注入する治療です。精液中の精子の数や動きがやや低い場合でも、精子を効率よく子宮内に届けることで、受精の可能性を高めることができます。タイミング法で性交渉を行う代わりに、調整した精子を子宮内に注入して、受精の効率を高めるための方法と考えるとわかりやすいでしょう。

体外受精・胚移植

体外受精・胚移植とは?

ここがポイント!
  • 体外で、さらに精子と卵子を近づけて受精させることで受精効率を高める方法
  • 重度の男性不妊へも対応が可能

人工授精で十分な効果が得られない場合や、精子の数や動きが大きく低下しており効果が期待しにくい場合には、体外受精・胚移植を行うことがあります。体外ではさらに近い距離で卵子と精子を出会わせることができ、重度の男性不妊にも対応することが可能になります。

顕微授精(ICSI)
ここがポイント!
  • 精子を卵子に直接注入することで、確実に出会わせる方法
  • 重度の男性因子への対応として行う

精子の数や運動性が極端に低い場合は、かなり近い距離でも精子と卵子がうまく出会わないことがあります。顕微授精は、細いガラス管を用いて精子を直接卵子の中に注入する方法で、精子と卵子を確実に出会わせることができる治療です。

精巣内精子採取術(TESE)
ここがポイント!
  • 無精子症の場合に、精巣内から精子を直接取り出す方法
  • 取り出した精子は凍結保存する
  • 受精させるときには顕微授精を行う

精巣内精子採取術とは、精巣から直接精子を取り出す治療です。射精した精液に精子が確認できない場合でも、精巣内に精子があれば、顕微授精に用いることができます。採取した精子はいったん凍結しておき、将来の妊娠のために保存しておくことが可能です。

男性不妊外来の受診

ここがポイント!
  • 泌尿器科を受診して、詳しく原因を調べてもらう
  • 原因によっては、治療で精液所見の改善が見込める

男性不妊外来の受診は、身体診察やホルモン検査などを通して、男性不妊の原因を調べるために行います。精索静脈瘤などの治療可能な原因が見つかった場合には、手術などによって精液所見が改善することがあります。

性交障害への対応

ここがポイント!
  • 性交障害自体の対応を行うか、人工授精や体外受精・胚移植などの治療で対応を行うか

人工授精

ここがポイント!
  • 性交渉の代わりとして、人工的に濃縮した精子を子宮内へ注入して妊娠を目指す

射精がうまくできない場合や、痛み、強い緊張や不安などのために性交が難しい場合には、代替手段として人工授精で妊娠を目指すことができます。これらの原因は改善が難しいことも多いため、妊娠を希望される場合には、人工授精が有効な選択肢となることがあります。

体外受精・胚移植

ここがポイント!
  • 性交障害に加えて精液所見や卵管の状態が良くない場合には、体外受精・胚移植での治療も可能

射精がうまくできない場合や、痛み、強い緊張や不安などのために性交が難しい場合に加えて、精液所見が悪い場合や、卵管に大きな問題がある場合には、体外受精・胚移植を選択する場合もあります。

男性不妊外来の受診

ここがポイント!
  • いきなり人工授精や体外受精・胚移植に抵抗がある場合は積極的に検討を

性交障害の原因が男性側にある場合や、射精障害がある場合には、男性不妊外来の受診をしていただくことも可能です。人工授精や体外受精・胚移植治療に抵抗がある場合には、積極的に検討してみましょう。

黄体機能不全への対応

ここがポイント!
  • 黄体ホルモンを補充し、着床や妊娠維持のサポートを行う

プロゲステロンの経口内服薬による黄体サポートが中心です。排卵後から月経が来るまでの期間に10日間程度内服していただきます。

機能性不妊(原因不明不妊)への対応

ここがポイント!
  • 検査で原因がわからない場合でも、人工授精や体外受精・胚移植を行い、妊娠率を上げることができる
  • 特に体外受精・胚移植で妊娠率が上昇する

機能性不妊(原因不明不妊)で大切なのは、妊娠率を上げるために「どの治療を選ぶか」という点です。原因がはっきりしないため、原因に直接アプローチする治療はできません。その代わり、妊娠率を上げていくための治療方法を選択することが基本になります。各治療の妊娠率や費用をきちんと把握し、ご自身に合ったペースで治療方針を考えていきましょう。

人工授精

ここがポイント!
  • 人工授精の妊娠率は半年で約3割

人工授精の妊娠率は年齢や精液所見、卵管因子の有無などの条件で変化しますが、半年で3割程度が目安になります。人工授精は1回の実施で約5500円の費用がかかります。

体外受精・胚移植

ここがポイント!
  • 一般的に、体外受精・胚移植の方が妊娠率の上昇効果は高い

体外受精・胚移植の妊娠率は、年齢などで変化しますが、1回の胚移植で30-50%程度です。35歳前後で1回の妊娠率が約50%だと仮定すると、コンスタントに胚移植ができた場合、半年以内に妊娠率は80-90%に達します。ただし、費用は人工授精より高額となり、1回の採卵と1回の胚移植を実施して、10-15万円の費用がかかります。

一般不妊治療と体外受精・胚移植

ここがポイント!
  • タイミング法や人工授精と体外受精・胚移植は明確に異なる
  • 受精卵に対応可能かどうかが大きなポイント

一般不妊治療(タイミング法と人工授精)は体外受精・胚移植と明確に異なる点があります。ここをしっかり理解することが、最適な治療の選択につながります。それでは見ていきましょう。

一般不妊治療と体外受精・胚移植の違い

ここがポイント!
  • 体外受精・胚移植では、受精卵側の対応を行って、妊娠の効率をあげることができる

一般不妊治療と体外受精・胚移植の一番大きな違いは、受精卵そのものの効率を高められるかどうかにあります。
一般不妊治療では、排卵のあとに起こる受精や受精卵の発育、卵管内での移動はすべて体の中で進むため、治療として介入できるのは主に排卵までの段階に限られます。そのため、受精卵側の状態を改善したり選別したりすることは困難です。
一方、体外受精・胚移植では、受精卵を一定期間体外で育てることができます。この間に受精卵の発育を確認し、妊娠の可能性が高いものを選んで子宮に戻すことができるため、受精卵側の効率を高めることが可能になります。

一般不妊治療とは

ここがポイント!
  • 排卵のタイミングと受精のタイミングを合わせるのが一般不妊治療
  • 性交渉の時期を合わせるのがタイミング法で、性交渉の代わりに精子を子宮内へ注入するのが人工授精
  • お腹の中で起こることについては、対応できない
  • 排卵の個数を増やすと、多胎妊娠になりやすい

一般不妊治療は、排卵のタイミングと受精のタイミングをできるだけ合わせることで、受精が起こる確率を高める治療です。排卵の時期に合わせて性交渉を行う方法がタイミング法で、排卵に合わせて精子を人工的に子宮内へ注入する方法が人工授精です。
これらの治療は、排卵や受精の段階には対応できますが、受精卵そのものの状態や、卵管の中で起こる輸送の問題までは対応できません。そのため、一定以上の治療効果を得るには限界があります。
このような場合には、体外受精・胚移植といった次の治療段階を検討することがあります。

体外受精・胚移植とは

ここがポイント!
  • 排卵、受精、受精卵の輸送といった、お腹の中で起こることに対応できる
  • さらに、排卵効率を上げ受精卵を選ぶことで、受精卵にも対応ができる
  • 排卵の個数を増やしても、多胎妊娠になりにくい

これに対し、体外受精・胚移植では、受精の効率を高めるだけでなく、受精卵そのものの状態や、卵管の中で起こる問題にも対応することができます。特にこの、受精卵そのものの状態に対応できるという点がポイントになります。
体外受精では、まず排卵誘発によって複数の卵子を育て、採取します。卵子が妊娠しやすい受精卵になる確率は、もともと半分以下とされているため、卵子の数を増やすことで妊娠の可能性を高めていきます。一般不妊治療で排卵数を増やすと多胎妊娠の危険が高まりますが、体外受精では妊娠率の高い受精卵を1個だけ選んで子宮に戻すことができるため、多胎妊娠を抑えることが可能です。
採取した卵子は体外ですべて受精させ、約5日間培養します。受精卵が胚盤胞と呼ばれる段階になると、形態から妊娠のしやすさをある程度判断できるようになり、受精卵ごとに妊娠率には大きな差が生じます。その中から、最も妊娠が期待できる受精卵を選んで移植します。
このように体外受精・胚移植では、受精効率を高めるだけでなく、卵管で起こる問題を避けながら、受精卵そのものに対応することで妊娠の可能性を最大限に高めることができます。

治療を進める際のポイント

ここがポイント!
  • 卵管や精液検査から治療の適応を判断する
  • 年齢や卵巣予備能から治療のペースを相談する
  • 総合的に判断して、治療方針を決定する

治療方針を考える際には、治療を行う理由(治療適応)があるかどうかと、治療をどういったペースで進めていくかがポイントとなります。特に、治療の進め方やスピードは結果に大きく影響するため、しっかり意識しておくことが大切です。

治療を行う理由があるかどうか

ここがポイント!
  • 治療適応をしっかりと判断して、効率よく治療を進めよう

特に保険診療では、医学的な理由(治療適応)がなければ治療を行うことができません。保険適応がない治療は、一般的に治療効果が十分に期待できないと考えられているものでもあります。そのため、効率よく治療を進めていくためには、治療適応を正しく判断することがとても重要になります。

治療をどういったペースで進めていくか

ここがポイント!
  • 効果の低い治療を漫然と行わない
  • 次の段階へ進む時期をしっかりと考えておく

もちろん、治療適応があるからといって、その治療を必ず行わなければならないわけではありません。治療適応の範囲内で、どの治療を選ぶかは、お二人の意思が最大限尊重されるべきです。一方で、効果が乏しい治療を漫然と続けてしまうと、限られた時間や費用を消耗してしまうこともあります。何となく治療を続けるのではなく、「ここまでで結果が出なければ次に進む」といったように、治療のペースや区切りをあらかじめ考えておくことをおすすめします。

『残り時間』が最重要

ここがポイント!
  • 年齢と残っている卵子の数を考えて、計画的に治療を進めよう

治療の進め方を考えるうえで大切なのが、「残り時間」という考え方です。年齢が上がるにつれて妊娠率は低下し、卵巣に残っている卵子の数も少なくなっていきます。その結果、治療を行っても妊娠に至らないケースが増えてきます。いつ頃から妊娠率が下がり始めるのか、どの程度まで卵子が減ると治療が難しくなるのかを把握し、そこまでの期間を「残り時間」と考えて、その使い方や配分を計画的に考えていきましょう。

どのタイミングで治療強度を上げていくのか

ここがポイント!
  • 治療の限界を把握し、治療効果が見込めないのなら、次の段階へ進むことを検討しよう

さらに、現在行っている治療が「いつまで効果を期待できるのか」という点にも目を向けておきましょう。効果が見込めなくなった段階で、次の治療へ進むことを検討することが、限られた時間を有効に使うために大切です。

結局、体外受精・胚移植をどのタイミングで実施するか

ここがポイント!
  • 一部の問題を除き、体外受精・胚移植で対応が可能
  • 体外受精・胚移植では、受精卵の対応が可能となることがポイント

治療を段階的に進めていく中で重要なポイントとなるのは、結局、体外受精・胚移植をどの段階で行うかという点です。体外受精・胚移植では、排卵や受精、卵管内での受精卵の輸送といった、多くの問題に対応することができます。さらに、一般不妊治療では難しい受精卵そのものの状態を確認し、選ぶことができるため、妊娠の可能性をより高めることが可能になります。

体外受精・胚移植の限界を理解しましょう

ここがポイント!
  • 体外受精・胚移植でも、受精卵の対応が難しくなると、効率を上げることが難しくなる
  • 卵子の数が少なくなった場合や、年齢による卵子の質の低下が著しい場合は、対応が難しくなる

逆に言えば、体外受精・胚移植でも対応が難しくなる段階に入ると、妊娠は一気に難しくなることがあります。排卵や受精、卵管内での受精卵の輸送といった点について、対応できなくなることは多くありません。しかし、体外受精・胚移植であっても、受精卵そのものの状態には対応できなくなることがあります。
これは主に、年齢が大きく上昇した場合や、卵巣に残っている卵子の数が大きく減少した場合に起こり、妊娠率の高い受精卵を得ることが難しくなるため、結果として治療が困難になることがあります。

タイミング法

タイミング法とは?

ここがポイント!
  • 排卵の時期と性交渉の時期を合わせるのがタイミング法
  • 薬で排卵の時期を調整したり、排卵後のホルモンのサポートを行ったりすることがある

タイミング法は、排卵の時期に合わせて性交渉を行うことで、受精が起こる確率を高める方法です。そのため、排卵のタイミングを正確に把握することがとても大切になります。

卵子は、卵巣の中にある「卵胞」と呼ばれる袋状の構造の中に存在します。月経の頃には卵胞はまだ10mm未満ですが、徐々に大きくなり、自然な周期では20mm前後になると排卵が起こります。超音波検査でこの卵胞の大きさを確認すること(卵胞モニタリング)で、排卵の時期を予測します。

性交渉のタイミングとしては、排卵の2日前から排卵当日ごろが目安となります。

補助的に、排卵誘発剤を使用したり、排卵のトリガーを行ったり、黄体補充を行うことがあります。

タイミング法の治療適応

ここがポイント!
  • 不妊症と診断された方の多くが対象
  • 両方の卵管がつまっている場合や、精子の数や運動性が極端に悪い場合はおすすめしない

タイミング法は、不妊症と診断された方の多くが対象となる治療ですが、すべての方に適しているわけではありません。両側の卵管が詰まっている場合や、精子の数や動きが極端に低い場合には、妊娠率が期待できないため、タイミング法をおすすめしないことがあります。

タイミング法の流れ

ここがポイント!
  • 超音波で卵胞の大きさを確認しながら、排卵の時期を予測する
  • 卵胞を大きくするために、排卵誘発剤でのサポートを行うことがある
  • 補助的に、排卵をさせるお薬をしたり黄体ホルモンの補充を行ったりすることがある
排卵誘発剤を使用しない場合

排卵が近づいた時期に、超音波検査で卵胞の発育を確認します。卵胞が十分に育っていれば、その時期に合わせてタイミングを取ります。発育が不十分な場合には、内服薬や注射による排卵誘発を行い、数日後に再度卵胞の発育を確認します。

排卵誘発剤を使用する場合

月経中に超音波検査を行い、前周期の卵胞が残っていないことや、すでに発育した卵胞がないことを確認したうえで、排卵誘発剤の内服を開始します。約1週間後に再度超音波検査を行い、卵胞が十分に発育していれば、その時期に合わせてタイミングを取ります。発育が不十分な場合には、注射による排卵誘発を追加し、再度卵胞の発育を確認します。

いずれの場合にも、補助的に排卵のトリガーや黄体補充を実施することがあります。

卵胞モニタリング

ここがポイント!
  • 卵胞が一定のサイズになると排卵が起こるため、超音波で卵胞の大きさを確認し、排卵の時期を予測する

超音波検査で卵胞の大きさを確認することが、タイミング法の基本です。卵子は卵胞と呼ばれる袋状の構造の中で育ち、卵胞が一定の大きさまで発育すると排卵が起こります。卵胞はある程度大きくなると、ほぼ一定のペースで成長するため、その変化を追うことで排卵の時期を予測できます。

排卵誘発剤

ここがポイント!
  • 卵胞の発育を早めるため、排卵誘発剤を使用することがある
  • 複数排卵による多胎妊娠に注意が必要
  • 複数の卵胞発育がある場合、避妊が必要になることがある

卵胞が一定の大きさまで育たないと、排卵は通常起こりません。月経周期が不規則な場合、この卵胞の発育のタイミングが毎回ばらつくため、排卵と性交渉の時期が合いにくくなったり、卵胞モニタリングを何度も行う必要が出てきたりすることがあります。排卵誘発剤は、卵胞の発育を早めてタイミングを整え、卵胞モニタリングを行う回数を減らし、排卵と性交渉を合わせやすくするために用いられます。ただし、複数の卵胞が育つことで、多胎妊娠の可能性が高くなる点には注意が必要です。

排卵のトリガー

ここがポイント!
  • 卵胞が一定のサイズになると、人為的に排卵を起こすことができる
  • 排卵の時期がコントロールできるため、タイミングを合わせやすくなることがある

卵胞が一定の大きさまで発育すると、薬を使って人為的に排卵を起こすことができます。これを「トリガー」と呼び、投与後およそ36~38時間で排卵が起こるとされています。排卵日をより正確に予測できるため、排卵と性交渉のタイミングを合わせやすくなります。

性交渉のタイミング

ここがポイント!
  • 排卵の1-2日前が妊娠しやすいと言われている
  • 排卵から時間が経つと、妊娠は難しくなる

性交渉のタイミングは、一般的に排卵日の2日前から当日までがよいとされています。中でも、排卵の1~2日前が最も妊娠しやすい時期です。排卵トリガーを行った場合は、当日または翌日に性交渉を行うことで、排卵のタイミングと合わせることができます。

排卵の確認

ここがポイント!
  • 超音波で排卵後の変化を確認することができる
  • 超音波での確認が難しいことがあり、採血での確認を行うこともある

タイミングがうまく合ったかを確認するために、排卵の確認を行うことがあります。排卵後には、超音波検査で子宮内膜が白っぽく変化したり、骨盤内に少量の水が見られたり、卵胞がつぶれて黄体に変化した様子が確認できることがあります。ただし、排卵直後は超音波では分かりにくい場合もあるため、採血で確認することがあります。血中プロゲステロン値が3.0ng/mL以上に上昇していれば、ほぼ排卵が起こったと判断できます。

黄体補充

ここがポイント!
  • 着床や妊娠維持の機能をサポートするためにお薬を使うことがある
  • すべての方を対象に行う治療ではない

黄体機能不全と判断された場合には、黄体補充を行うことがあります。排卵の数日後から約10日間、プロゲステロン製剤を内服します。ただし、黄体補充の効果に関するエビデンスは限定的であり、すべての方に行う治療ではなく、必要と判断された場合にのみ実施します。

タイミング法の限界

ここがポイント!
  • 卵管の通りや精液所見が良くない場合には、十分な効果が見込めないことがある
  • 受精卵への対応はできない

タイミング法は、排卵の時期に合わせて性交渉を行い、受精の効率を高める治療です。しかし、卵管の通りが悪い場合や、精子の数や動きが低下している場合には、受精効率を十分に高められず、妊娠率の向上が期待できないことがあります。また、タイミング法では受精卵そのものに対する介入はできません。そのため、治療効果には限界があり、妊娠に至らない場合や効果が見込めない状況では、次の段階の治療へ進むことをおすすめすることがあります。

人工授精

人工授精とは?

ここがポイント!
  • 排卵のタイミングに合わせて、性交渉の代わりに精子を子宮内へ注入するのが人工授精

人工授精とは、精液を洗浄・濃縮し、子宮内に入る量に調整したうえで、細いチューブを使って子宮内に注入する治療です。精液中の精子の数や動きがやや低い場合でも、精子を効率よく子宮内に届けることで、受精の可能性を高めることができます。タイミング法で性交渉を行う代わりに、調整した精子を子宮内に注入して、受精の効率を高めるための方法と考えるとわかりやすいでしょう。

人工授精の治療適応

ここがポイント!
  • 主に精液所見が少し良くない方が対象
  • 性交障害・射精障害、原因がはっきりしない不妊症(機能性不妊)、子宮頸管が原因と考えられる不妊症も対象
  • 精液所見がかなり悪い場合には、治療効果が期待できないこともある

人工授精は、軽度から中等度の男性不妊、性交障害・射精障害、原因がはっきりしない不妊症(機能性不妊)、子宮頸管が原因と考えられる不妊症が対象となります。一方で、両側の卵管が詰まっている場合や、精子の数や動きが極めて低い場合には、妊娠率が期待できないため、体外受精・胚移植をおすすめすることがあります。

人工授精治療の流れ

ここがポイント!
  • タイミング法とよく似ている
  • 性交渉を行う代わりに、濃縮した精子を子宮の中へ注入し、受精の効率を高める

人工授精の治療の流れは、基本的にタイミング法とよく似ています。排卵の時期に性交渉を行う代わりに、クリニックへ精液を持参していただき、調整した精子を子宮内に注入します。卵胞モニタリングや排卵誘発など、それ以外の流れはタイミング法と同様に進めていきます。

精液の準備

ここがポイント!
  • 自宅での採取がおすすめ
  • 専用の容器に精液を採取する
  • 採取から持参までは3時間を目安に
  • 前回の射精から2-7日の間隔を空ける

精液は、自宅またはクリニックで、専用の容器に採取していただきます。人工授精の前には精液の調整が必要ですが、採取直後の精液はすぐには調整できず、30分ほど置いて液化するのを待つ必要があります。自宅で採取した場合は、来院までの間に自然に液化が進むため待ち時間が少なく、スムーズに調整が行えます。このため、基本的に自宅での採取をおすすめしています。

人工授精の限界

ここがポイント!
  • 卵管の通りや精液所見がかなり悪い場合には、十分な効果が見込めないことがある
  • 受精卵への対応はできない

人工授精は、排卵の時期に合わせて、洗浄・濃縮した精子を子宮内に注入し、受精の効率を高める治療です。タイミング法よりも受精効率を高めた方法ですが、タイミング法と同様に治療効果には限界があります。そのため、人工授精で妊娠に至らない場合や、効果が期待しにくい状況では、次の段階の治療へ進むことをおすすめする場合があります。

体外受精・胚移植

体外受精・胚移植とは?

ここがポイント!
  • 体外に取り出した卵子を、そのまま体外で受精させ、発育してきた受精卵を直接子宮の中に戻す方法
  • 排卵の効率を大きく上昇させ、受精卵の選別を行うことで、受精卵側に対応することができる

体外受精・胚移植では体外に取り出した卵子を、そのまま体の外で受精させ、発育してきた受精卵(胚)を直接子宮の中に戻す治療法です。この一連の流れにより、受精の効率を高めたり、卵管の問題を避けたり、胚を選別することによる妊娠率の向上が期待できます。

体外受精・胚移植の治療適応

ここがポイント!
  • 卵管の状態や精液所見がかなり悪い方が主な対象
  • 原因不明不妊や一般不妊治療で効果が出なかった方も対象になる

体外受精・胚移植は、卵管が狭くなっていたり詰まっていたりする方や精子の数や動きが大きく低下している方、原因がはっきりしないまま一定期間妊娠に至らない方、人工授精の治療で妊娠に至らなかった方が対象になります。特に、卵管が両方つまっている方や精液所見が極めて悪い方は、体外受精の絶対的な適応(体外受精・胚移植を行わないと妊娠が極めて難しい)となります。

体外受精・胚移植のセオリー

『卵子を増やして、受精卵を選別する』が基本
ここがポイント!
  • 発育させる卵子数を増やして、妊娠率の高い受精卵を獲得できる確率を上げる
  • 受精卵を形で選別し、妊娠率の高いものを見分ける

体外受精・胚移植は、精子の数や動きが悪い場合でも受精の効率を高めることができ、また卵管に大きな問題がある場合でも、その影響を避けて妊娠を目指せる治療です。しかし、受精効率を上げ、卵管の問題を回避するだけでは、受精卵そのものの問題には対応できません。受精卵そのものへの対応とはすなわち、妊娠率の高い受精卵を効率よく獲得するということに他なりませんが、これは卵子を増やして、受精卵を選別することで行います。まずは、一度に多数の卵子を獲得することで、妊娠率の高い受精卵になる卵子を獲得する確率を上昇させます。卵子のままだと妊娠率がわからないので、胚培養を経て、胚の形態評価を行うことで、妊娠率の高い胚(受精卵)を選び取ります。

体外受精・胚移植の保険診療上のポイント

ここがポイント!
  • 卵子をどこまで増やすかと、受精卵をどこまで選別するかがポイント
卵子をどこまで増やすか?
ここがポイント!
  • 治療成績と安全性を考えながら、ある程度まではしっかり増やそう

1回の採卵で得られる卵子の数が多いほど、採卵あたりの妊娠率は高くなると考えられています。ただし、卵子数を増やしすぎると、胚移植の方法が制限されたり、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)などの合併症のリスクが高くなったりすることがあります。そのため、治療成績と安全性のバランスを考えながら、無理のない目標採卵数を設定することが大切です。

受精卵をどこまで選別するか?
ここがポイント!
  • しっかりと選別を行うのが基本
  • 選別しすぎには注意

胚の選別を厳しく行うほど、1回あたりの妊娠率は高くなる傾向があります。ただし、選別を厳しくしすぎると、本来は妊娠できた可能性のある受精卵まで除外してしまったり、移植できる受精卵が残らなくなったりすることもあります。そのため、基本的には受精卵の状態をしっかり評価しつつも、治療の段階や状況に応じて、妊娠率と選択肢のバランスを考えた選別基準を設定することが大切です。

保険診療上のポイント
ここがポイント!
  • 子宮の中に受精卵を戻せる回数は上限がある。
  • 39歳以下で治療を開始した場合は6回まで
  • 40歳以上で治療を開始した場合は3回まで
  • 出産すると回数はリセットされるが、12週までの流産ではリセットされない

保険診療で行える胚移植には上限があり、原則として6回までと定められています(40歳以上で治療を開始した場合は3回まで)。制限の回数内で出産に至らなかった場合、それ以降の治療は自費診療となります。また、途中で流産してしまった場合でも、基本的に移植回数はリセットされません。そのため、最初の胚移植から妊娠率を高めることが重要となります。妊娠率を高めるためには、しっかりと受精卵の評価・選別を行うことが大切であり、そのためには、ある程度多くの卵子を確保しておくことが望ましいと考えられます。

体外受精・胚移植の限界

『増やせない、選別できない』が体外受精・胚移植の限界
ここがポイント!
  • 卵子が増やせないと、良い受精卵ができる確率が上げられない
  • 受精卵の選別ができないと、妊娠率が上げられない

ここまでお話してきたように、体外受精・胚移植は獲得卵子数を増やして、受精卵を選別することが基本です。
逆に、卵子を十分に増やせない場合や、受精卵の選別が十分にできない状況では、妊娠率を高める効果はどうしても限られてしまいます。これが、体外受精・胚移植の限界ともいえます。
体外受精・胚移植での介入を前提とする場合に大切なことは、『増やせない、選別できない』という状況になることを避けることです。もうすでに『増やせない、選別できない』状況に近づいている、または該当する場合には、治療適応があれば、速やかに体外受精・胚移植への移行を検討することが重要です。

『増やせない、選別できない』場合には
ここがポイント!
  • 受精卵の選別を厳しく行わないで子宮の中に戻すことも検討する

「卵子を増やせない、受精卵を選別できない」状況では、妊娠しやすい受精卵を得るまでに時間や治療の回数がかかることが多くなります。そのような場合には、何度か採卵を重ねて妊娠率の高い受精卵を得るまで粘り強く治療を続ける方法と、選別の基準をやや緩め、一定の妊娠の可能性がある受精卵が得られた時点で胚移植に進む方法の、どちらかを選択することになります。どちらが適切かは状況によって異なるため、十分にご相談しながら治療方針を決めていきます。

体外受精・胚移植の流れ

ここがポイント!
  • 採卵→媒精→胚培養を経てできた受精卵を選別し、適切な時期に胚移植を行う。

体外受精・胚移植ではまず、細い金属の針を使って卵子を体外に取り出します(採卵)。取り出した卵子は体外で精子と受精させ(媒精)、受精卵を数日間培養します(胚培養)。発育の様子を確認し、妊娠の可能性が高い胚を選んで(胚選別)、適切な時期に子宮内へ戻します(胚移植)。

採卵

ここがポイント!
  • 卵巣刺激により発育する卵胞を増やし、一定サイズになれば採卵を行う
  • 採卵2日前に、卵子を成熟させる薬剤を投与する
  • 膣越しに卵胞を針で刺し、卵子を体外へ回収する
  • 採卵当日に受精させる

採卵では、卵巣刺激により複数の卵胞を発育させます。卵胞が18mm以上になったあたりを目安に、卵胞を最終成熟させる薬剤を投与し、その2日後に金属の針を用いて卵胞から卵子を体外に取り出します。取り出した卵子は当日中に精子とかけ合わせて受精させます。

卵巣刺激法のルールと考え方
ここがポイント!
  • 卵子を増やしたい場合は一般法、卵子を増やしたくないか増えない場合は低刺激法
  • 注射開始のタイミングが早いのが一般法、遅いのが低刺激法
  • 排卵を抑える方法で名前が変わる
  • 卵子を増やした場合はすぐには子宮内へ戻せない

卵巣刺激法は、「卵子をどれくらい採るか」と「排卵をどう抑えるか」で決まります。多く採る方法が一般法、少なめが低刺激法です。一般法には、注射薬で抑えるアンタゴニスト法、内服薬で抑えるPPOS法、点鼻薬を使うショート法・ロング法があります。低刺激法は主に注射薬で排卵を抑えます。採卵あたりの妊娠率を考え、基本は一般法を選択します。受精卵をすぐ戻す新鮮胚移植か、いったん凍結してから戻す凍結融解胚移植かによっても刺激法は変わります。また、卵子を増やしすぎると卵巣過剰刺激症候群という合併症のリスクがあるため、効果と安全性のバランスを考えて方法を決定します。

一般法と低刺激法
ここがポイント!
  • 注射開始のタイミングが早いのが一般法、遅いのが低刺激法

卵巣刺激には注射薬と内服薬を使用しますが、中心となるのは注射薬です。一般法と低刺激法は、注射薬を開始するタイミングが異なります。卵子の獲得個数を増やしたい場合は、早めに注射を開始したほうが良く、一般法では月経2-3日目から注射を開始します。これに対し、低刺激法では最初は内服薬から開始し、注射を遅らせて開始します。

アンタゴニスト法
ここがポイント!
  • 一般法のため、早いタイミングで注射を開始する
  • ある程度注射を打ってから、排卵を抑える注射を開始する
  • 卵胞の個数があまり多くなければ、受精卵をすぐに子宮の中に戻すこともできる

アンタゴニスト法は、月経2-3日目から卵胞を発育させる注射薬を開始し、投与6日目ごろ、卵胞径15mm前後を目安に排卵を抑えるアンタゴニスト製剤を開始します。卵胞の最終成熟には、点鼻薬とhCG製剤のどちらも使用できます。アンタゴニスト法では、新鮮胚移植と凍結融解胚移植のいずれも可能です。

PPOS法
ここがポイント!
  • 一般法のため、早いタイミングで注射を開始する
  • 内服薬を注射と同じタイミングで開始して排卵を抑える
  • 卵胞の個数があまり多くなくても、受精卵をすぐに子宮の中に戻すことはできない

PPOS法は、月経2-3日目から卵胞を発育させる注射薬を開始し、同時に排卵を抑えるためにプロゲステロンの内服薬を開始します。卵胞の最終成熟には、点鼻薬とhCG製剤のどちらも使用できます。PPOS法で卵巣刺激を行った場合には、お薬の性質上、新鮮胚移植はできなくなります。

ショート法
ここがポイント!
  • 一般法のため、早いタイミングで注射を開始する
  • 点鼻薬を注射と同じタイミングで開始して排卵を抑える
  • 個数が多いと卵巣が腫れやすい
  • 卵胞の個数があまり多くなければ、受精卵をすぐに子宮の中に戻すこともできる

ショート法は、月経2-3日目から卵胞を発育させる注射薬を開始し、同時に排卵を抑えるために点鼻薬を開始します。卵胞の最終成熟には、hCG製剤しか使用できません。hCG製剤を使用した場合は、卵巣会場刺激症候群が重症化しやすくなるため、個数が多くなりやすい方へはあまり行いません。ショート法では、新鮮胚移植と凍結融解胚移植のいずれも可能です。

ロング法
ここがポイント!
  • 一般法のため、早いタイミングで注射を開始する
  • 点鼻薬を月経が来る前から開始して排卵を抑える
  • 個数が多いと卵巣が腫れやすい
  • 卵胞の個数があまり多くなければ、受精卵をすぐに子宮の中に戻すこともできる

ロング法は、月経2-3日目から卵胞を発育させる注射薬を開始します。ショート法と同じく排卵を抑えるために点鼻薬を使用しますが、月経が来る前から開始します。ショート法と同じく卵胞の最終成熟には、hCG製剤しか使用できませんので、個数が多くなりやすい方へはあまり行いません。ロング法では、新鮮胚移植と凍結融解胚移植のいずれも可能です。

低刺激法
ここがポイント!
  • 最初は内服薬から開始して、遅れて注射を開始する
  • ある程度卵胞が大きくなってから、排卵を抑える注射を開始する
  • 卵胞の個数があまり多くならないことが多く、受精卵をすぐに子宮の中に戻すことができる

低刺激法では、月経2-3日目からクロミッド、レトロゾールなど内服薬を開始し、その後遅らせて注射薬を開始する方法です。卵子の個数がもともと増えにくい方やあえて増やさない場合に行います。アンタゴニスト法に準じて卵胞径15mm前後を目安に排卵を抑えるアンタゴニスト製剤を開始します。卵胞の最終成熟には、点鼻薬とhCG製剤のどちらも使用できますが、主にhCG製剤を使用します。低刺激法では、新鮮胚移植と凍結融解胚移植のいずれも可能ですが、回収卵子個数が多くなければ、基本的に新鮮胚移植を行います。

卵巣過剰刺激症候群の予防
ここがポイント!
  • 発育する卵胞の数が多くなると起こりやすく、重い合併症を起こすことがある
  • ショート法、ロング法で起こりやすい
  • 受精卵をすぐに子宮の中に戻すと起こりやすい
  • 採卵後にお薬を飲んで予防することがある

獲得卵子数が多い場合に問題となる合併症が、卵巣過剰刺激症候群です。排卵後、卵胞は黄体に変化し、妊娠に必要なホルモンを分泌しますが、卵子が多く採れると黄体が多数でき、ホルモン分泌が過剰になります。この異常なホルモン分泌により発症します。
そのため、卵子数が多いと予想される場合は、重症化を防ぐ工夫が必要です。具体的にはhCG製剤を使わず、そのまま妊娠を成立させない方針とし、PPOS法やアンタゴニスト法で刺激を行い、胚移植は凍結融解胚移植が中心となります。

採卵の実際
ここがポイント!
  • 超音波で確認しながら、膣壁越しに細い金属の針で卵胞に針を刺して卵子を回収する
  • 麻酔をかけて行うことができる
  • 合併症は多くないが、出血や感染が問題になることがある

採卵は、超音波で確認しながら、膣壁越しに細い金属の針で卵胞に針を刺して卵子を回収する処置です。体への負担は比較的少なく、通常は15分程度の短時間で終了します。出血や感染症などが問題となることがありますが、頻度は1%未満と多くはありません。

麻酔方法
ここがポイント!
  • 静脈麻酔は半分寝ている間に採卵する方法
  • 局所麻酔は、針を刺す部分に麻酔をかけて、起きたままする方法
  • 飲み薬のみで採卵することもある

麻酔方法は、主に局所麻酔か静脈麻酔で行います。卵胞の発育個数が少ない場合は、麻酔を行わないこともあります。局所麻酔では、採卵時の痛みを和らげるため、子宮頸部周囲に麻酔薬を注射します。意識は保たれ、体への負担が少ない麻酔です。静脈麻酔は、点滴から麻酔薬を投与し、半分眠った状態で採卵を行う方法です。痛みや不安が少なく、短時間で目が覚め、当日帰宅できます。

媒精と胚培養

ここがポイント!
  • 媒精とは受精させる方法のこと
  • 胚培養は、受精卵を選ぶために行う
媒精方法(授精方法)の選択
ここがポイント!
  • 体外受精と顕微授精がある
  • 精子の数や運動性に問題がなければ、体外受精が基本
  • 精子の数や運動性に問題があれば、顕微授精が基本

受精させる方法には、大きく分けて体外受精と顕微授精があります。
体外受精は、精子の数や運動性に問題がない場合に選択され、シャーレ内で卵子の周囲に精子を振りかけ、自然な受精を待つ方法です。
顕微授精は、精子の数や運動性に問題がある場合などに行い、細いガラス管で精子を1個吸い取り、卵子の中へ直接注入します。顕微授精は、必要な場合に限って行うことが推奨されています。過去の採卵で体外受精の受精率が低かった場合などにも行います。

受精卵の培養
ここがポイント!
  • 培養は、受精卵を選ぶために行う
  • 受精させた後に、培養器に入れて見守る

受精後は、発育に適した環境を整えた培養器で受精卵を培養します。培養器には従来型とタイムラプスがあり、タイムラプスでは胚を外に出さず連続観察が可能です。胚への負担が少なく、細胞分裂の経過をさかのぼって評価できます。培養は胚を選別する目的で行いますが、基本は環境を整え、自然な発育を待つ工程です。

受精卵の選別方法
ここがポイント!
  • 見た目のかたちが良いものを選ぶ
  • 受精から5-6日後が選別に適しており、かたちから妊娠率を見分けやすい

受精卵を人為的に発育させることはできないため、自然に良好な発育を示し、一定以上の状態に達したものを選別します。形態評価は主に目視で行い、受精後5~6日目には成長段階や、将来胎盤になる細胞と胎児になる細胞の状態をもとに判定します。

胚移植

ここがポイント!
  • できた受精卵を子宮内に着床させるために行う
  • 戻す時期によって、新鮮胚移植と凍結融解胚移植に分かれる
  • 凍結融解胚移植では、受精卵が着床するための内膜準備が必要
胚移植方法の基本的な考え方
ここがポイント!
  • 妊娠率や合併症リスク、胚移植可能な時期などを考えて決める

胚移植の方法は、妊娠率や合併症のリスク、移植が可能となる時期などのメリット・デメリットを考慮して決定します。一般に、卵子が多く採れると予想される場合は自然周期での凍結融解胚移植を、卵子数が多くならないと考えられる場合は新鮮胚移植を選択することが多くなります。

新鮮胚移植と凍結融解胚移植
ここがポイント!
  • 基本は新鮮胚移植
  • 卵子の数が多くなる場合やスケジュールが合わない場合、内膜ポリープなどの手術を控えている場合などは凍結融解胚移植を行う
  • 「増やして、選別する」のルールが優先される

胚凍結は本来、妊娠に必須の過程ではありません。妊娠・出産に伴う合併症が少なく、早期に胚移植が可能な点から、条件が整えば新鮮胚移植が推奨されます。
一方で、新鮮胚移植により合併症が増える場合や、移植スケジュールが合わない場合、移植前に手術を予定している場合などは、凍結融解胚移植が適しています。特に卵子数が多く採れた場合は、卵巣過剰刺激症候群が重症化しやすく、新鮮胚移植は慎重に判断します。新鮮胚移植を行うために卵子数を意図的に減らすことは、一般的に推奨されていません。

新鮮胚移植
ここがポイント!
  • 卵子数があまり多くない場合には、基本的に新鮮胚移植を推奨

受精卵の評価を行った段階で、凍結せずにそのまま子宮内へ戻す方法です。妊娠・出産に伴う合併症が少なく、早期に胚移植が可能な点から、条件が整えば新鮮胚移植が推奨されます。獲得卵子数が多くならない方は、基本的に新鮮胚移植をおすすめします。

凍結融解胚移植
ここがポイント!
  • 卵子数が多くなる場合や、移植スケジュールが合わない場合、移植前に手術を予定している場合には、凍結融解胚移植を推奨

受精卵を評価した段階でいったん凍結保存し、後日子宮内へ戻す方法です。受精卵は時間とともに着床する力を失うため、凍結によりその能力を保ちます。卵子数が多くなる場合や、移植スケジュールが合わない場合、移植前に手術を予定している場合には、凍結融解胚移植が勧められます。

黄体補充
ここがポイント!
  • 胚移植を決定したころから開始する。
  • エストロゲンの経皮製剤とプロゲステロンの膣座薬を使用することが多い

胚移植前には黄体補充を実施します。基本的にエストロゲンの経皮製剤とプロゲステロンの膣座薬を使用します。補充の必要が亡くなれば、早期に終了していきます。

胚移植の実際
ここがポイント!
  • 受精卵を子宮内に運んであげる
  • 子宮の中に運んであげれば、受精卵は自分で着床する
  • 合併症は多くないが、出血や感染が問題になることがある

受精卵は自ら移動できないため、子宮内へ運んであげる必要があります。細いチューブに受精卵を吸い取り、そのチューブの先端を子宮内に入れた状態で、中にゆっくりと押し出してあげます。その後、うまく子宮の内膜に着床して順調に発育していくと、やがて妊娠が成立します。

凍結融解胚移植の内膜準備法

ここがポイント!
  • 自然周期とホルモン補充周期がある
  • ホルモン補充周期で合併症が増えることが報告されており、自然周期が推奨される
自然周期とホルモン補充周期
ここがポイント!
  • 自然周期は、排卵に伴う自分のホルモンの作用で内膜が準備される
  • ホルモン補充周期は、お薬によって補充されたホルモンの作用で内膜が準備される

子宮内膜には着床に適した時期があり、凍結融解胚移植では、胚が着床するタイミングと内膜の状態を正確に合わせる必要があります。内膜準備の方法には自然周期とホルモン補充周期があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。

自然周期
ここがポイント!
  • 排卵に合わせて胚移植を行う方法
  • 妊娠高血圧症、癒着胎盤、産後出血の増加などの合併症がホルモン補充周期に比べて少なくなるメリットがある
  • 受診回数が多くなる、スケジュールが決めにくいといったデメリットがある

自然周期は、いったん排卵を起こし、本来卵子が着床する時期に合わせて、凍結していた受精卵を子宮内へ戻す方法です。受診回数が増え、予定調整が難しい点はありますが、薬の使用量が少なく、妊娠・出産の合併症が少ない利点があります。このため、凍結融解胚移植では自然周期が主流になりつつあります。

ホルモン補充周期
ここがポイント!
  • お薬で排卵のホルモン変化を再現して胚移植を行う方法
  • 妊娠高血圧症、癒着胎盤、産後出血の増加などの合併症がホルモン補充周期に比べて多くなるデメリットがある
  • 受診回数が少ない、スケジュールが決めやすいといったメリットがある

ホルモン補充周期は、自然周期のホルモン変化を薬で再現する方法で、多くの場合排卵は起こりません。受診回数が少なく、予定を立てやすい利点がありますが、使用する薬が多く、妊娠・出産時の合併症が増える傾向があります。そのため、排卵が極めて起こりにくい方などに限定して行います。