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女性の不妊症と検査法

女性の不妊症と検査法

不妊症の診断

次は診断のお話をしていきます。本格的な診断を行う前に、かんたんな不妊症チェックをしてみても良いでしょう。

不妊症診断のポイント

網羅的に検査を行い、総合判断を行うことが重要

ここがポイント!
  • 複数の原因があることも
  • しっかり調べて、総合的に方針を決めよう

不妊症の原因はさまざまで、複数の原因が重なっていることも少なくありません。1つ原因が見つかると、それだけに目が向きがちですが、他の原因があると治療を行っても妊娠に至らず、再び検査が必要になることがあります。こうしたことを繰り返すうちに時間が経ち、年齢の影響を受けやすくなる場合もあります。そのため、最初から網羅的に検査を行い、結果を総合的に判断して、考えられる原因すべてに対応することが大切です。

その異常所見は本当に不妊症の原因ですか?

ここがポイント!
  • 検査で異常があっても、不妊症の原因にはなっていないことがある

検査で何か異常が見つかると、それが妊娠しない原因だと思いたくなるかもしれません。しかし、その異常が本当に妊娠を妨げているかどうかは、落ち着いて総合的に考えることが大切です。原因でない場合、その治療を行っても妊娠につながらないことがあります。

検査で異常がなければ本当に原因とはなっていない?

ここがポイント!
  • 検査で異常がなくても、不妊症の原因に全くなっていないとは言い切れないことがある

逆に、検査で明らかな異常が見つからなくても、妊娠の妨げとなっている場合があります。たとえば、卵管造影検査で卵管の通りに問題がなくても、卵管の中のヒダが傷ついていると、妊娠が成立しにくいことがあります。このため、検査結果だけにとらわれず、落ち着いて総合的に判断することが大切です。

個々の検査結果も重要だが、『残り時間』も重要

ここがポイント!
  • 自分の「残り時間」をしっかり把握して、計画的に進めていこう

検査結果は、治療方針を決めるうえでとても大切な情報です。それと同じくらい、あるいはそれ以上に重要なのが「残り時間」という考え方です。時間が経つにつれて妊娠率は下がり、残っている卵子の数も少なくなっていきます。ご自身の状況をしっかりと意識し、妊娠が難しくなる前に早めに行動することが大切です。

排卵障害の診断

ここがポイント!
  • 卵子が残っているか、ホルモンが正常に分泌されているかが診断のポイント

排卵障害とは、排卵がうまく起こらない状態を指します。その結果、排卵と受精のタイミングが合わず、妊娠しにくくなることがあります。排卵障害を考える際には、卵巣に卵子が十分に残っているか、また排卵を起こすためのホルモンがきちんと分泌されているかが重要なポイントとなります。問診や採血、超音波検査で診断を行います。

まずは月経周期の確認

ここがポイント!
  • 月経周期から排卵障害に該当するかチェックしよう

排卵障害の症状は、主に月経周期の乱れとして現れます。正常な月経周期は25~38日で、周期ごとのばらつきが6日以内とされています。この範囲から外れている場合、排卵障害が疑われます。簡単に確認が可能ですので、ご自身の月経周期を確認してみましょう。

残っている卵子の数の確認

ここがポイント!
  • 残っている卵子の数を確認しよう。
  • 特に卵子が極端に少ない場合に注意!

排卵障害は、卵巣に残っている卵子が極端に少ない場合や、反対に多すぎる場合に起こることがあります。卵子が多い場合は治療で対応することが比較的かんたんですが、卵子が少ない場合は対応が難しくなることがあります。月経周期の乱れがある方は、卵巣に残っている卵子の数を調べてみることが大切です。主に、採血や超音波検査で確認を行います。

ホルモン基礎値を確認する

ここがポイント!
  • ホルモンが正常に分泌されているか確認しよう
  • 月経中の採血が基本だが、月経中でなくても採血できる場合がある

卵巣に十分な卵子が残っている場合には、ホルモンの血液検査を行うことが大切です。排卵は脳から分泌されるホルモンによって調整されており、その分泌に異常があると排卵障害が起こることがあります。また、卵巣に残っている卵子が少ない場合にも、その影響でホルモンの値に異常がみられることがあります。ホルモン基礎値は、月経中の採血で確認を行います。ただし、月経中以外でも、卵胞が10mm未満なら測定は可能です。

超音波検査

ここがポイント!
  • 排卵前後の変化を、負担が少なく確認できる
  • 排卵する時期の特定もできる

超音波検査では、月経の頃に卵巣の中に10mm未満の袋状の構造(卵胞)を確認できます。排卵が近づくと卵胞は約20mmまで大きくなり、排卵後には黄体化と呼ばれる変化が起こります。超音波検査では、このような排卵前後の変化を、体への負担が少なく簡単に確認できます。月経周期を通して、繰り返し観察を行います。

子宮卵管造影検査

ここがポイント!
  • 主に卵管の通り方を調べる検査
  • 治療方針を決めるときに重要

子宮卵管造影検査とは、主に卵管の通り方を調べる検査です。子宮内に専用のカテーテル留置し、造影剤と呼ばれるレントゲンに写る液体を流します。卵管が通過していれば、子宮内に造影剤が充満したのち、卵管が描出され、お腹の中へ広がっていくのが確認できます。卵管の狭窄や閉塞を調べ、卵管性不妊の診断に役立ちます。子宮の中の形も調べることができます。

その他の卵管通過性を調べる検査

卵管の通りを調べる検査には、ほかに卵管通水検査や卵管通気検査、腹腔鏡検査などがあります。ただし、結果の再現性や客観性に限界があること、また体への負担が大きい検査もあるため、実際に行われる機会は多くありません。

子宮鏡検査

ここがポイント!
  • 細いカメラで子宮の中を確認する検査
  • ポリープや子宮筋腫などの診断に有効

子宮鏡検査とは、細いカメラを子宮内に入れて、子宮内膜や子宮内の状態を直接観察する検査です。子宮内膜ポリープや子宮筋腫など、着床を妨げる原因の確認に役立ちます。検査は月経が終了してから排卵するまでの間に行われます。

黄体期(排卵後)の検査

ここがポイント!
  • 排卵の約1週間後に行う
  • 主に排卵したことを確認する

排卵の確認(エコー)

ここがポイント!
  • 排卵後はエコーで特徴的な変化が確認できる
  • エコーでは排卵後の確認が難しい場合もあり、採血も行う

排卵後の超音波検査では、排卵した卵胞が縮小し、黄体と呼ばれる構造に変化している様子が確認できることがあります。また、子宮内膜が白っぽく変化したり、骨盤内に少量の液体が見られたりすることもあり、排卵が起こった目安となります。ただし、これらの所見がはっきりしない場合もあり、その際には血液検査が必要となることもあります。

プロゲステロン(採血)

ここがポイント!
  • 一定値以上に上昇している場合は、排卵後とほぼ断定ができる
  • 一定値に満たない場合は、着床や妊娠の継続に問題がある場合がある

プロゲステロンは、排卵の少し前から分泌が始まり、排卵後に大きく増えるホルモンです。血中プロゲステロン値が 3.0ng/mL以上であれば、排卵が起こった可能性が高いと考えられます。一方、排卵後も十分に値が上がらない場合には、黄体機能不全と診断されることがあります。プロゲステロンは妊娠するための内膜変化や妊娠の維持に関わるホルモンで、分泌量が少ないことで着床や妊娠の継続に影響することがあります。

甲状腺機能検査(採血)

ここがポイント!
  • 異常がある場合、妊娠に影響する可能性がある
  • 内科的に追加検査や治療が必要になる場合がある

甲状腺ホルモンの異常は妊娠に影響すると言われています。甲状腺ホルモンが多すぎても少なすぎても、排卵障害や月経不順、流産の原因になることがあります。そのため、不妊症の検査では甲状腺機能を確認し、異常があれば先に治療することが大切です。

テストステロン(採血)

ここがポイント!
  • 異常に高い場合、排卵障害と関連する場合がある

排卵障害の原因となる多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)では、男性ホルモンの一種であるテストステロンが高くなることがあります。多嚢胞性卵巣症候群では、卵胞の発育がうまく進まず、排卵が起こりにくくなります。

精液の検査

ここがポイント!
  • 採取した精液中の精子の数と動きなどを確認する
  • 専用の容器で採取し、前回の射精から2-7日の間隔を空ける

テキスト

精液検査の見方

ここがポイント!
  • 主に精液中の精子の数と動き(運動性)をみる

精液検査では、主に精子の数と動き(運動性)をもとに評価を行います。近年では、精子の数と動きを組み合わせて評価するSMI(Sperm Motility Index)という指標も用いられています。膣内に射精された精子は、卵管膨大部までの長い距離を移動する必要があるため、精子の数や運動性が低いと、到達できる精子が少なくなり、受精が起こりにくくなることがあります。

検査は原則2回実施

ここがポイント!
  • 検査ごとの変動が大きいため、原則2回実施

精液検査の結果は、体調や採取条件によって変動することがあり、1回だけで判断せず、必要に応じて複数回行うことが大切です。基本的には2回実施し、平均をとって判断します。

精液検査に『正常値』はない

ここがポイント!
  • 精液検査には、いわゆる正常値も異常値もない
  • 精液検査だけで、妊娠できるかできないかを言い当てることはできない

精液検査には「正常・異常」を分けるはっきりした正常値はなく、「基準値」があるだけです。過去にたくさんの研究者が正常値を見つけようとしましたが、結局見つかりませんでした。この基準値は、1年以内に妊娠した多くのカップルの精液データを集め、その中で下位5%を除いた値を目安として定められています。つまり、基準値を下回っていても妊娠している方は実際にいます。そのため、精液検査の結果だけで妊娠できるかできないかを判断することはできません。

卵巣予備能(残存する卵子の数)の検査

ここがポイント!
  • 残っている卵子の数を調べる検査
  • 卵子の質はわからず、妊娠の可能性の予測もできない
  • 治療のペースを考える上で有効となる

卵巣予備能とは、卵巣にどのくらいの卵子が残存しているかの指標です。卵子数は年齢ともに減少し、一定以上に減少すると、治療効率が低下することがあります。あくまで数を表す指標で、質を表す指標ではありません。代表的な検査として、AMHやAFCがあります。

AMH採血

ここがポイント!
  • 採血で確認でき、客観的な指標となる
  • 月経周期のいつでも検査可能
  • 多少の検査誤差があるが、検査する人による誤差は生じない

AMH採血は、卵巣に残っている卵子の数の目安となる検査です。AMHの値は妊娠率そのものとの関連性はありませんが、体外受精・胚移植で採卵できる卵子数の目安となります。そのため、AMH値を参考に、どのタイミングで体外受精・胚移植を行うかを考える指標の一つになります。AMH値が低下すると、体外受精・胚移植の治療効率が下がることがあります。

AFC(エコー)

ここがポイント!
  • 客観的な指標となる
  • 月経中から排卵前に行う。
  • 検査する人によって多少の計測誤差がある

Antral Follicle Count(AFC)とは、超音波検査で確認できる、卵巣内の小さな卵胞(胞状卵胞)の数を数えたものです。AMHとの相関性があり、卵巣に残っている卵子の数の目安となります。AMHと同じく、どのタイミングで体外受精・胚移植を行うかを考える指標の一つになります。測定時期や測定者によって誤差が出ることありますが、比較的簡便に行える検査です。

その他の卵巣予備能検査

ここがポイント!
  • 月経中に採血を行う
  • 卵子数がかなり低下しないと異常値にならない

月経中に測定する卵胞刺激ホルモン(FSH)も、卵巣予備能の目安となる検査の一つです。ただし、月経周期ごとの変動が大きいことや、エストラジオールの影響を受けやすいこと、卵巣予備能が大きく低下しないと異常値にならないといった特徴があります。このため、現在はAMHやAFC(胞状卵胞数)が、卵巣予備能を評価する主な検査として用いられています。

その他の検査

クラミジア抗原検査(PCR)

ここがポイント!
  • 今クラミジアに感染しているかどうかを調べる検査
  • 内診で行う検査

クラミジア抗原検査は、現在クラミジア感染しているかどうかを調べる検査です。感染に気づかないまま進行すると、卵管の障害など不妊の原因になることがあるため、早期発見と治療が大切です。また感染がある状態では、卵管造影検査などの一部の検査・治療を実施することができません。

クラミジア抗体検査

ここがポイント!
  • 昔クラミジアに感染したことがあるかどうかを調べる検査
  • かなり昔の感染はわからないことがある
  • 採血検査

クラミジア抗体検査は、過去にクラミジアに感染したことがあるかを調べる血液検査です。過去に感染がある場合、卵管に炎症や障害が起きている可能性があり、卵管性不妊の評価に役立ちます。ただし、かなり昔の感染では抗体が陰性になることがあり、判断が難しい場合もあります。

抗精子抗体

ここがポイント!
  • 体内に入った精子を動かなくして受精を起こしにくくする体質かどうかを調べる検査
  • 異常であっても自然妊娠の可能性があり、方針を決めるために必須の検査ではない
  • 保険適応外で自費の検査

抗精子抗体とは、体が精子を異物と認識し、攻撃してしまう抗体のことです。抗体があると精子の動きが妨げられ、受精しにくくなることがありますが、抗体が陽性でも自然に妊娠する可能性はあります。主に血液検査で調べますが、保険適用外のため自費検査となります。

検査の進め方

ここがポイント!
  • 検査は基本的に月経期から開始する。
  • 月経中の検査→子宮卵管造影検査→排卵後の検査の順番で進む
  • 精液検査はどの時期に行っても良い

月経期検査

ここがポイント!
  • 月経の3-5日目に行う
  • 採血検査を行う

検査時期の目安:月経の3-5日目に行います。ただし一番大きな卵胞が10mm未満であれば、検査を実施することがあります。
検査内容:女性側の月経期採血を行います。

子宮卵管造影検査(+子宮鏡検査)

ここがポイント!
  • 排卵する前の、月経7-12日目に行う
  • 検査まで性交渉は控えるが、検査後はOK
  • クラミジア抗原陽性の場合は検査できない

検査時期の目安:月経の7-12日目、ただし、排卵が遅くなる場合は13日目以降でも実施することが可能です。
検査内容:子宮内にカテーテルを留置し、造影剤を流して卵管の通過性を確認します。子宮内腔病変が疑われる場合は子宮鏡検査も同時に実施します。
注意点:検査が終了するまで、その周期は性交渉を避けていただきます。クラミジア抗原検査が陽性の場合は、当日検査がキャンセルになります。

精液検査

ここがポイント!
  • 専用の容器に精液を採取する
  • 採取から持参までは3時間を目安に
  • 前回の射精から2-7日の間隔を空ける
  • 2回目の検査は前回から2-3週間空ける

検査時期:2~7日間の禁欲が推奨されます。短すぎると精子数が少なくなり、長すぎると運動性が低下することがあります。2回目の検査を実施する場合は、前回から2-3週間空けて検査を行います。
検査内容:精液中の精子の数や運動性を確認します。
注意点:採取の際には、コンドームを使用しないでください。

黄体期検査

ここがポイント!
  • 排卵の約1週間後に行う
  • エコーで排卵を確認してから採血を行う

検査時期:排卵後5-9日に実施します。
検査内容:エコーで排卵の確認を行い、排卵が確認できたら女性側の黄体期採血を行います。

検査結果の説明、治療方針の決定

ここがポイント!
  • 卵管や精液検査から治療の適応を判断する
  • 年齢や卵巣予備能から治療のペースを相談する
  • 総合的に判断して、治療方針を決定する

全ての検査結果が出そろったら、ご夫婦で受診していただき、検査結果の説明と治療方針の決定を行います。治療方針が決定したら、初回の治療計画書を作成します。