医局通信『性器脱とペッサリー療法』
毎年10月18日は世界メノポーズデー(更年期の健康に関わる情報を全世界へ提供する日)です。
一般社団法人日本女性医学学会主催の「メノポーズ週間」は、<更年期についての情報を一般の方々に広くお知らせし、女性の健康増進に貢献すること>を目的とし2007年にスタートし、更年期の身体症状(疾患)や女性ホルモンについての正しい知識を得て、専門家による適切な治療やケアの実践を促す活動を目指しています。
今回は、更年期に多い症状や病気の中から『性器脱』についてお話します。
外陰部に下垂感や膣の膨隆感があれば性器脱(子宮脱・子宮下垂)が疑われます。出産や加齢による筋力の低下などで、骨盤内の臓器を支える骨盤底の筋肉や靭帯が損傷または緩くなり、それらの臓器が下垂してくる病気です。排尿障害や排便障害などが合併していることもあります。
診察では性器がどれほど下がっているかを診て、その程度により骨盤底筋訓練、ペッサリー療法、手術療法が選択されます。
症状が軽く、下垂が膣口より1cmより上方の場合、子宮下垂の状態になります。この場合、肛門括約筋と尿道の括約筋を締める骨盤底筋訓練を勧めます。
下垂が膣口に対してそれ以上、下方に進行している場合は子宮脱となります。その下垂度に伴って、下垂感・排尿障害・排便障害などの発現頻度が増します。
これらの症状があれば、ペッサリー療法あるいは手術療法の積極的な管理が必要となります。
ペッサリー療法は、ブレスレットの様な輪状の医療製品を膣内に挿入し、子宮の下垂を元の位置に整復します。装着されるペッサリーのサイズの目安は、腟口の長径より 1~2cm 大きいサイズが使われる場合が多いです。実際に装着してみて、フィット感でサイズを選択する方法もあります。
ペッサリーの管理法について、初回装着後に自然脱出や出血がなければ1-3週間後に装着状態を点検します。その後も1~3か月ごとに診察し、腟壁びらんなどの異常のチェックとペッサリーの洗浄や交換を行います。
ペッサリー使用時の膣粘膜発赤、びらんなどは時々みられる症状です。女性ホルモンであるエストリールは、腟粘膜の弾力を回復させ、骨盤底の脆弱化した支持組織を改善します。ペッサリー療法時に膣粘膜の損傷の治療や予防に、エストリール投与は有用です。
ペッサリーを装着したものの容易に自然脱出する、あるいはペッサリーの装着による腟壁びらんからの性器出血を繰り返すことなどがあると、ペッサリー療法での管理の限界となります。その際は、手術療法に移行する可能性があります。
【更年期のお話】
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●更年期障害とホルモン剤以外の薬物療法
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