体外受精は、体外に卵子を採取し、精子と受精させ、受精卵を子宮内に戻す治療です。
何度も人工授精をして妊娠にいたらない人や、卵管が閉塞しているなど卵管に原因のある人、子宮内膜症や腹膜炎の後遺症で骨盤内の癒着などが認められる人、男性の精子に問題があって人工授精での妊娠が不可能な人、他の治療で効果が認められなかった人などが適応となります。
図:体外受精の簡単な流れ
薬により複数個の卵胞を育て、超音波で卵巣を観察しながら排卵直前の成熟卵子を採卵の手術で取り出します。また一方でご主人から採取した精子を調整し、運動性の良い精子を選びます。
そして、この精子をシャーレの中で1個の卵子に対して5万から10万個になるようにふりかけ受精させます。これを通常媒精(体外受精)と言います。
しかし、体外受精での受精率が低い方や、高度の乏精子症や精子無力症の方などは、顕微鏡下で精子を卵子に直接注入する顕微授精を考慮します。
そして受精後、培養機器で細胞分裂の確認をし、ある程度まで進んだところで、受精卵を子宮に戻して着床させます。
また多く採取した卵子は、受精後細胞分裂を経て分割胚、胚盤胞の段階でマイナス196度の液体窒素で凍結保存をして、次の治療に用いることもできます。
受精卵(前核期) | 二分割 | 四分割 | 八分割 |
桑実胚 | 胚盤胞 | 拡張胚盤胞 | ハッチング胚盤胞 |
顕微授精(ICSI:イクシー)とは、別名「卵細胞質内精子注入法」とも言われ、顕微鏡下で精子と卵子を受精する方法です。卵の細胞の中に極細(直径6~8μm)のガラス管で直接精子を注入します。
特に精子に問題がある場合(高度の乏精子症や高度の精子無力症)に選択される治療法です。ただ、男性側の原因にかぎらず、女性側に抗精子抗体がある場合や、透明帯が厚かったり硬かったりして精子が入って行きにくい卵子でも受精することができます。また、体外受精での受精率が低い場合や、着床ができない場合にも応用されています。
どちらの受精方法を行うかは精液検査の結果もありますが、受精障害も考慮しなくてはいけません。顕微授精では、形態と運動性の良い精子を選び出し、卵子の中に直接注入できますが、体外受精では、精子が自らの力で卵子の中に入らなくてはいけません。
また、精液検査の結果が良好であった場合でも、体外受精後、約10%に、受精卵を全く得ることが出来ない、受精率が低い、といった受精障害が発生する報告があります。
そこで当クリニックでは、採卵で一定数の卵子が得られた場合、初回は受精障害の対策として体外受精も顕微授精もどちらも行うスプリット法を行います。
顕微授精を行うため費用は高くなりますが、卵巣刺激や採卵をして折角たくさんの卵子が得られたのに、全て受精しなかったという事態を回避できる可能性があります。
イギリスで1978年7月25日に体外受精児第1号のルイーズ・ブラウンさんが誕生。その後、1983年10月に東北大学で国内初の体外受精児が誕生しました。もともとは卵管に問題がある人の治療として始まりましたが、その後広く応用され、今では一般的な不妊治療になりつつあります。
現在では、体外受精での出生児が2019年までの合計で71万931人とうい厚生労働省の統計があります。2019年では出生児の約14人に1人が体外受精により生まれた子供と報告されています。
体外受精において、40歳未満の方が良好な胚(受精卵)を4回以上移植した場合、80%以上の方が妊娠されるといわれています。よって、良好な胚を4個以上かつ3回以上移植しても妊娠しない場合を「反復着床不全:repeated implantation failure:RIF」といいます。
着床不全の原因は多岐にわたり、解明は簡単ではありません。当院では妊娠率を高め、流産を減らすことを目的とし、着床不全検査、着床前診断にも力をいれています。
※保険診療、先進医療または自由診療で使える技術があります。自由診療と保険診療の併用は混合診療にあたり禁止されているため、自由診療の技術を使いたい場合は保険診療分を含めた全ての費用が自己負担となります。
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