院長ブログ『子宮内フローラ検査』
今まで無菌状態だと言われていた子宮内にも菌が存在することが分かり、近年、その子宮内のフローラ(細菌の集合体)の作る環境が胎児だけでなく、妊娠する前の段階で受精卵などにも関係していることも分かってきました。
膣内に存在する善玉菌(ラクトバチルス属)は、ウイルス感染や他の菌が増殖できない環境を作ることで、胎児を感染症から守る役割をしていることが知られています。
子宮内フローラが乱れて雑菌や悪玉菌が増えると、子宮内膜で免疫が活性化し受精卵を異物として攻撃してしまう可能性が指摘されています。
不妊治療を行っていく中で一番厄介なのが原因不明の不妊症です。この検査がまた1つ、妊娠への足がかりになる可能性も出てきているということです。
一例ではありますが子宮内フローラ検査を行い、ラクトバチルスが多かった正常郡とそうでなかった異常群を比べてみたところ、成績改善が見込まれたという報告もあり、何度か移植されてもなかなか妊娠しない方や治療開始前の検査の1つとして、また、子宮内環境が変わっている可能性のある二人目以降の妊娠を希望した時などに行う場合があります。
検査の進め方として、まず子宮内フローラ検査を受ける周期は避妊を行っていただきます。検査を受けるタイミングは、生理中でなければいつ受けていただいても構いません。
当日は簡単な問診を受けていただき、その後、器具を用いて子宮内の細胞を吸引していきます。その際に月経痛のような痛みが一瞬感じられる場合があります。(希望があれば、予め鎮痛剤を投与してから行うことも可能です。)
検査後はクリニック内で安静をとっていただけますが、安静を取らずに、検査後すぐに動いていただくことも可能です。検査を行った当日は、入浴は控えてシャワーのみとなります。他に生活上で気にしていただくことはございません。
採った細胞は検査機関に送り、DNAを解析しラクトバチルス属の割合とその他の細菌を同定し判定します。結果が出るまでは約3週間程度です。
子宮内フローラ検査の結果、子宮内の善玉菌であるラクトバチルス属が少なく、バランスが乱れていることが分かれば、結果に基づいて抗生物質の加療や、子宮内に乳酸菌が増えやすくなるサプリを摂取するなどバランスを整える治療を行ないます。
子宮内フローラ検査は、現在全国の150ほどの施設で実施されています。
ご希望の方は、まずはお近くのかかりつけ医にご相談してみてはいかがでしょうか。
赤ちゃんを授かるための
ママとパパの本
いちばん丁寧に心を込めて解説した「赤ちゃんを授かるための知識」が詰まった1冊です。