院長ブログ『何歳まで子どもを産めますか』
今月の日本医師会雑誌ではプレコンセプションケア(妊娠前の健康管理)が特集されていました。日本では現在、若年妊娠よりも妊娠の高年齢化による不妊症、流産を繰り返す不育症の増加が深刻になっており、プレコンセプションケアの必要性が高まってきているというお話です。
ここに女性の年齢と出産数の変化について調べた研究がありますが、グラフでは、出産数は30歳から緩やかに減少し、年齢の上昇とともに不妊症が増加しているのが分かります。
当院では2022年から プレコンセプションケア を開始しており、将来のライフプランを考えて日々の生活や健康と向き合い、健康的な生活を送ることで、将来の不妊リスクの低減に繋がればと思っています。
また、定型的な診察のみではなく、じっくりとお話を聞きし、お一人おひとりの状況に合わせて、提案をさせていただいております。お話のみで来られる方もいらっしゃいますが、検査は最小限から始めており、AMH検査や超音波検査はお勧めしております。
AMH(抗ミュラー管ホルモン)検査は血液検査で、月経周期のどのタイミングでも測定可能で、同世代に比べてAMHが少なくなることは、卵巣予備能の低下、すなわち卵子の在庫が少ないということなので、早い子供作りをする必要があることを意味します。
卵子数は多くなくても卵子の質が良ければ妊娠の可能性は高いです。しかし、卵子の質が低下していれば、妊娠の可能性は低く、排卵誘発に対する反応が不良となります。
排卵があっても、卵子自体は女性の年齢に応じて年をとるので、30代後半以降は、卵子の質(妊娠のおこりやすさ)は低下します。卵子は精子と違い、胎児の時の卵巣の中に作られた卵母細胞をずっと使い続けるので、いったん卵子の質が低下すると深刻です。
日本では義務教育における、避妊や性病の教育はあっても、生殖教育は行われていません。思春期から20代までの極端なダイエットや激しいスポーツにおける生理の問題など、そのままにしていませんか?健康を管理し妊娠に関する正しい知識を持つことが大切です。30代、40代では、まだ結婚や妊娠を先のばしにしている人も多いと思いますが、平均寿命が伸びても、卵巣の働きには、もともと決まっている一定の寿命があり、今のところ、治療でそれを延長するのは不可能です。仕事や家庭の事情で、数年後に妊娠を考えているならば、先ずはご自身の卵巣予備能を把握して、今後の人生設計をたててみてはいかがでしょうか。
●プレコンセプションケア
平日の診療時間または土曜日の診療後14時~
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