医局通信『不育症②』
夫婦どちらかの染色体異常というリスク因子からご説明します。
流産手術の際に、子宮内に残っている内容物(胎児組織・胎盤の一部である絨毛)を採取し、胎児の染色体核型分析をすると、反復流産においても染色体異常がみられます。
この胎児の染色体異常は、夫婦どちらかの染色体異常が原因となることがあるので、夫婦の染色体分析を行うと不育症のリスク評価が可能となります。
しかし、その染色体検査の前に臨床遺伝専門医から遺伝学カウンセリングを受けることが望ましいとされています。また、検査結果の説明を受ける際にも、一方の配偶者に不利益にならないような配慮が必要です。
子宮の形態異常では、本来、子宮の原器が出生までに左右から中央で融合することにより子宮は完成します。この過程に障害をきたすと子宮の形態異常と診断されます。
子宮の形態異常には中隔子宮、双角子宮などがあります。子宮卵管造影検査、超音波検査、MRI検査などで調べることができます。
内分泌異常では、内分泌疾患でコントロール不良な時には、糖尿病や甲状腺機能異常や高プロラクチン血症なども不育症の原因となります。妊娠前にこれらの疾患を良好に管理し、血糖コントロール、甲状腺機能や高プロラクチン値を正常に戻すことで流産の予防をします。また糖尿病の場合、血糖のコントロールが悪いと、胎児の奇形や巨大児のリスクが増えます。
最後に血液凝固に関係する抗リン脂質抗体の異常ですが、不育症の3-15%にみられるリスク因子で、この抗体が陽性で、さらに12週間以上の間隔をあけて再検査しても陽性となる場合、抗リン脂質抗体症候群と診断されます。低用量アスピリンとヘパリンの併用療法が有効です。抗リン脂質抗体症候群では、妊娠中の血栓症のリスクが高まります。
流産の原因を特定することで、その後の妊娠の継続・出産の可能性を探ります。あきらめずに、検査・治療をすることをお勧めします。
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