医局通信『バルトリン腺嚢胞』
膣の肛門側外側に、丸いしこりが触れたらバルトリン腺囊胞という言葉を思い出してください。
バルトリン腺は、女性の膣口の左右に存在する分泌腺です。粘液を分泌し、膣分泌液と混ざり、性交時の潤滑さを促進します。バルトリン腺の開口部は、膣の5時と7時の位置の両側にあります。
バルトリン腺囊胞の多くは、バルトリン腺開口部がつまることによりできます。バルトリン腺そのものが腫脹したり、バルトリン腺の腺管が袋状に拡張したりします。
囊胞の内容物は粘液性分泌物ですが、囊胞に細菌感染が起こると膿による膿瘍を形成します。
<バルトリン腺囊胞の診断(視診と触診)>
痛みや腫れなどの炎症所見がない場合は、感染のないバルトリン腺囊胞を疑い、炎症所見があれば膿がある膿瘍となります。
バルトリン腺囊胞が小さく、無症状ならとくに治療を行わず経過観察することができます。しかし、痛み、発赤、圧迫感などの何かの症状があれば、治療の対象となります。
●炎症が軽い場合
抗生物質の服用が必要となり、さらに消炎鎮痛剤を併用することもあります。
●炎症や痛みが特に強い場合
膿瘍を形成した場合には、薬の治療に加えて外科的治療が必要となることがあります。急性期の痛みを取るためには、バルトリン腺嚢胞を針でさして膿を吸引したり、切開をして嚢胞の液を排出させます。切開術は、切開部が再び癒着することもあります。
これらの医療処置で膿汁が確認された場合は、細菌培養検査を行い、さらに抗生物質の投与も行います。膿の起炎菌は、ブドウ球菌、連鎖球菌、大腸菌および嫌気性菌が主体となります。嚢胞が比較的大きい場合、嚢胞の開口部を切開して作り、それが塞がらないように数針縫う方法が必要となります(造袋術)。
外来で局所麻酔下ですることもできます。バルトリン腺の分泌機能を保つことができ、再発も少ないです。
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